認知的思考力テストの解答と考察
8月23日のブログで認知思考テストというものを紹介しました。設問を再掲すると、
Q1.
バットとボールの値段を合計すると1ドル10セントである。バットはボールよりも1ドル高い。では、ボールの値段はいくらか?(制限時間10秒)
Q2
5台の機械を5分間作動させると5個の製品が出来上がる。では、100台の
機械で100個の製品を作るには何分間作動させる必要があるか?(制限時間10秒)
Q3.
ある湖に「スイレンの葉」が浮かんでいる。スイレンの葉は毎日2倍に増える。湖全体をスイレンの葉が覆い尽くすまでに48日間かかった。では、蓮が湖の半分を覆うのには何日かかる?(制限時間5秒)
の3問です。なお、制限時間は無視して頂いてかまいません。
さて、この問題群ですが一見すると直感で即答できるくらい簡単に見えます。実際に被験者を集めて行った場合、以下のような回答が寄せられるそうです。
Q1の回答
10セント(直感的に1ドル10セント−1ドル=10セントを計算)
Q2の回答
100分(「5台の機械を5分間作動させると5個できる」という5:5:5の比率から連想)
Q3
24日(問題文中で「半分」とあるので、48日の半分である24日を想起)
上記の回答はいずれもまず最初に「直感的」に思い浮かんでしまうそうです。これらの直感的に思いついた答えはいずれも不正解なのですが、正解に至った人であっても、初めから正解がわかったのではなく、直感的な不正解を想起するそうです。
では、正解ですが
Q1の正解
5セント
Q2の正解
5分
Q3の正解
47日
になります。
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ここで、原典の論文にはいつくか興味深い考察が書かれています。
第一の考察は、先にも述べましたが「万人が必ずといっていいほど“直感的な回答”の方をいの一番に思い浮かべる」ということです。例えば、「バットとボール問題」でも正解した人でも最初に10セントを連想し、その後、修正するという経路を辿っていました。
つまり、思考判断においては、どうしても「直感が優先する」ようです。コレは避けて通れないものみたいで、特に設問のように「キリの良い数字」ほど問題が簡単に見えるので直感的判断で終始してしまう。これが「キリの悪い数字」、例えば、“ボールとバットを足すと1ドル7セントで、バットはボールより93セント高い”のように、“半端な数字”を持ち出されると直感が効かないので正答率は上昇するそうです。
(ちなみにこの場合は、バットは1ドル、ボールは7セント)
第二の考察は、当該設問の難易度を被験者に問うたところ、正解者は比較的「難しい」と返答した(問題に対する一般予想正答率を尋ねたら「60%程度」との返事)、一方、不正解者は「易しい」と答えた(一般予想正答率は「90%程度」との返事)そうです。
このことについて論文筆者は、“正解者は「直感解の罠」に気付き、それを脳内で訂正して正解したという経験があるが、不正解者にはその経験がない。したがって、不正解者は正解者よりも自信過剰になるのだろう”とみています。
つまり、何らかの罠や危険に気付けない人に限って「直感頼み」の「自信過剰バカ」という困った性癖を持つ恐れがあるということです。
経験の差とは「経験した、しない」という単純な“体験量の差”に留まらず、たとえそれが無事に成功しても「多くの罠を認識できる力、それらを擬似教訓として知覚できる力、加えてそれを次回に活かせる力」といった総合学習能力の違いによって質的な意味での認知的能力の差が複利的に発現する可能性がある、ということのようです。