「餅は餅屋」ということか

2012年7月8日付けの日経新聞13面「日曜に考える」の欄で、フェノウエイブインベストメント社長の若林氏のインタビュー記事が載っていた。言わずと知れた「エレクトロニクス産業の重鎮アナリスト」であり、日経のアナリストランキングでも1位を取ったことのある大物だ。

彼の「発言」とされる引用箇所からいくつか印象に残った意見をひとってみよう。

「テレビに限らず各種の家電やIT(情報技術)端末市場を観察していると、世界市場が数千万台規模の間は日本勢が健闘するが、一億台を突破(同時に価格が500ドルを切る)すると、途端に競争力が低下するという法則のようなものがある」

「携帯電話やパソコンでも市場規模が小さかった1980年代や90年代は世界で一定の存在感があったが今は厳しい。薄型テレビも年間5000万台くらいまでは日本が強かったが、いまは2億台を突破している。市場の規模に反比例して日本企業は強みを失ってしまう」

「日本は『自前の工場で作る』というものづくり信仰が強すぎて、外部化の流れに乗り遅れた」

「韓国のサムスン電子との大きな違いは事業のスピード感だ。」「パソコンでもテレビでも機器の台数拡大は製品サイクルの短期化と連動して起きる。組織にスピード感がないと対応できないが日本企業は意思決定が遅い。」

「企業には固有の時間軸や規模感があり、それから大きく外れた事業に手を出しても無残に失敗するだけだ。」

ソニーなどがスマホに力を入れるというが、私にとっては耳を疑うような方針だ。スマホ事業は買い替えサイクルが2年以下と、テレビ以上にスピード感が必要。テレビで失敗したのにアップルやサムスン相手にスマホで成功すると考える理由がわからない。」

「一方で日本企業の体質にぴたりと合致する分野もある。例えば、エアコンなどの白物家電はそれほど市場規模は大きくなく、製品サイクルも長い。」

日立製作所三菱電機が復活したのも、鉄道や重電、産業機械といったゆったりとしたリズムの事業に回帰したからだ。面白いことに、テレビなどではあれだけ強いサムスンも、複写機や携帯電話の基地局といった台数規模がそれほど大きくなく、5年以上のサイクルの業務用危機の市場ではパットしない。彼らの苦手な分野に日本企業の活路がある」

「単に競合プレーヤーを減らすという従来型の再編ではだめだ。半導体DRAMエルピーダメモリー1社に集約されたがうまくいかなかった」

「むしろ期待したいのは、業界の枠を超えた越境型の再編だ。」

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なるほど、もちはもちやということかな。