総務・財務・経理という会社の恥部隠し担当部署

オリンパスの菊川前会長は今回の「飛ばし」という不正会計事件の当事者であるが、飛ばしの発端となる財テクは菊川氏が財務部にいた80年代後半頃、当時の社長が積極的に始めたそうだ。時価会計が導入された平成13年(今からちょうど10年前の2001年だ)当時、損失額は500億円程度だったのだが風評被害を恐れたため「時価に評価」を避け、そこから「遊泳」が始まった。最終的に損失は500億円から1000億円程度まで倍化、「菊川政権」になってからもM&Aなどを利用した損失穴埋め作業は続くことになる。

ここで財務上がりの菊川氏が後に社長、そして会長になった背景を、低俗に勘繰ってみたい。それは、ずばり会社の暗部であり「恥部」となった「損失飛ばし案件」を熟知する身分だったからではないか?ということである。つまり、一般的に言われているような、社長の資質なんぞはオリンパスにとっては金輪際カンケーない、最重案件である「恥部隠し」を中心とする社長人選だったと疑われても仕方がない。よくもまあ、そんなひとが新外人社長の資質云々を言えたもんだ。

オリンパスは高性能内視鏡のメーカーだけに、今回のことを契機にして、自分自身の組織内部に「高性能内視鏡」を入れてチェックしてみたらどうか?と思う。

話は逸れるが、ここでひとつの大胆な仮説が成り立つ。

「歴代社長が決まって「財務・経理・総務」(いわゆるフィナンシャル&アドミニ系部署)あたりの出身者で固められているような会社には、何らかの不都合な真実(大抵の場合、表面化されていない大きな損失とか反社会・反市場・社会悪な連中との濃ゆい付き合いとか)があって、そうした秘密が漏れるのを「守る」ためアドミニ社長ばかりが塑造される」という仮説だ。

確かめたことはないが分析の結果、状況証拠として十分機能するのであれば、投資判断や志望先企業の選定などにも役に立ちそうだ。

オリンパスは損失を飛ばして時価の回復を待ったのだろうが、そうは上手くいかなかった。たまたま、めぐり合わせが悪かったのか、運が悪かったのか分からないが、ひとつ教訓として言えることがある。

それはいくら損失を秘密にしても必ず外部に漏洩するということだ。なぜか。外部の人間に必ず相談するからだ。オリンパスの件でも、外資系の証券会社の連中が「オリンパスに逃走用の車」を準備したようだが、その段階で外部に話を持ちかけている以上、秘密にしておくことは無理だ。守秘義務という約束事があるものの、うわさは流れてしまう。

山一證券の飛ばし事件でも、受け皿を作ったのはリーマンブラザーズ証券であり、少なくとも相談された側のリーマン証券ではその事実(山一證券の巨額損失隠し)を掴んでいたことになるし、人材の流動性の高い業界ゆえにうわさは広まるのも早い。

オリンパスにせよ、山一證券にせよ、或いは他の会社にせよ、飛ばしの「よからぬうわさ」は必ず漏れるし、そうした「よからぬうわさ」によって、自らが期待して病まない「市場時価の回復」にも少なからぬ悪影響が及ぼされるのだ。自らの行いと市場時価の回復は実は「地下茎」で繋がっているということなのだ。

教訓として肝に銘じておくことをオススメする。