国家と心中する金融

欧州での銀行間取引が2009年の金融危機直後並みの低水準にまで落ち込んでいるそうだ。ということは、まさに今既に「二度目の金融危機状態」なのかもしれないが、銀行が互いを信用できなくなるのは異様な状態と言って過言ではない。

こうした銀行同士で互いが互いに「怖くて貸せない事情」の背景には、国債のデフォルトリスクがある。つまり、ギリシャ、イタリア、スペインなど相対的に低格付けのソブリン債を持っている当該国の銀行に対して与信が下り難いというわけ。他方、ドイツの長期金利が1.9%以下まで低下している様子からも分かるとおり、極度のフライ・トゥ・クオリティが起きているようだ。

つまり、いまや「銀行の信用力=国家の格付け」となってしまったのが、欧州の銀行と金融システムなのだ。そして国債のクレジット・リスクが上がったため、金融システムに直撃。ここ数年せっせと行ったコア資本強化策も、保有国債の格下げで一気に吹っ飛んだ感がある。

銀行も、世の中が不景気なので民間への貸し出しより、政府への貸し出し----つまり、国債への投資に積極的であったのだが、完全に冷や水を浴びせられた格好になった。せっかく積みあがったポジションが、がらがらと崩れる感があり、まさに賽の河原のよう。結局、自分たちのツケを政府のツケに回してみたものの、形を変えてブーメランのように戻ってきたのだ。

この「ブーメラン」は西条秀樹ではないが「きっと、あなたに戻ってくるだろう」という意味で国債をたんまり持っている日本の金融機関にも当てはまる。派手にやりすぎたポジションには必ず相応のしっぺ返しがやってくるものだ。それがいつなのか、はきと申し上げることは困難であるが、でもいつかやってくる。

そのとき日本はどうなる?幸い国内貯蓄と黒字収支があるので助かっているが、本質的な構造は欧州のおかれている状況と同じだ。

ただ、救いなのは世界的に見ても「民間企業部門はキャッシュリッチ」であり、それもそのはずで金融危機後世界各国で景気刺激策としてエコ補助金など税金の投入が行われた。いわば、政府のばら撒いた税金が民間に滞留しているのだ。

なので、政府はその滞留資金を還流してもらえばよい。やはり世界各国で同時に財政再建策として行うのだ。ちょうど2年前に「世界各国で景気刺激策」を実施した仕組みと同じように。そうすれば、金融不安などは和らぐだろう。そして、金融不安が和らげば実体経済も安定化に向かうはずである。