島田紳助氏の会見から

おととい(2011年8月23日)の晩、突然「紳助引退会見」の生中継が目に飛び込んできました。最初から視聴していたわけではないので、初めはなんのことだか状況が掴めないまま「あれ?辞めちゃうの」という感じでした。

しばらく会見を拝聴してようやく、暴力団関係者との親密な関係を所属事務所から詰問され、当人も弁解しなかったことから引退となった、という流れを理解しました。その場で流石だなと感じたのは、ネガティブな情報がマスコミなどを介して二次的流通して、あれこれ追求される前にとっとと謝罪と引責辞任の発表を済ませた当人の「手際の良さ」です。恐らく、ことの運び次第で「致命傷となり得る」との判断があったのでしょう。

一般論として、ダメージが死活的領域に達ようなリスク「テールリスク」と称しますが、高いテールリスクを感知し、ダメージを最小限に抑えるために幕引きを即断したのであれば、島田氏のリスク管理の能力の高さには驚嘆を覚えます。こんなことは「学校で習って」できるようなことではない。欲望と幻想の芸能界での“海千山千の経験”、“百戦錬磨の鍛錬”によって成せる技でしょう。「道場剣法」では歯が立たない世界でしょうから。

素早い謝罪行動は、周りが自分を非難する時間を与えないという点でも先手必勝でした。加えて、引退を即断し、自らに罰を課した点で、周囲(マスコミ辺り)からの執拗な攻撃の可能性を未然に防ぎました。更に、他人からの処罰ではなく自己引責であったため、かえって「潔さ」が印象付けられました。こうした反作用なポジティブ効果は(島田氏クラスであれば)狙っていたと推察されます。しらばっくれたり、ぐずぐずと煮え切らない態度を取れば取るほど逆効果としてマイナスの印象を与えがちですが、島田氏は「都合の悪いことを即時開示し、謝罪し、辞任する」ことで「逆・逆効果」というべきアクロバットを披露したようです。政治家や電力会社の社長も見習うべきでしょう。

事実、「同情票」が集まりつつあるようです。味方を増やしておけば将来の復帰も叶いやすい。

コンセンサスをマネージする能力が如何に重要か、大変勉強になりました。