21世紀のゴールドラッシュ

「砂金探し」がブームだそうだ。まさにゴールドラッシュ。ドルが下落する一方、その反作用で金が上昇するというここ数年繰り返されてきた構図だ。紙のお金より貴金属という発想はわからないでもないが。

しかしながら、円ベースの投資家からすると円高基調ゆえ、金に投資しても金価格の上昇は円高で相殺されてしまって、それほど有意義な投資対象ではない感じだ。

全ては「ドルで見ると」という世界観であり、要するに基軸通貨であるドルがその効力を失っているという現象を金価格で見るかドル円レートで見るかの違いでしかないようである。円は貿易収支上の連鎖ピラミッドの上位に位置しているので、内外金利差が小さい時分には買われやすい。

ドルはこの先どうなるのだろう。米国政府は「借金を返済するために、より多くの借金をする」ということに終始するのであれば、ドルの下落は続きそうだ。加えて、米国も「流動性の罠」に陥っているとするならば、低金利はおろか量的緩和も効果がないと知りつつも、実体経済にお金が回らず景気浮揚が見込めない以上、「必要悪」な政策を続けるしかない。

流動性の罠」とは市場がどこかで分断してしまっているために起きると筆者は推察する。「市場の断絶」とは国債のような場所とその外側とが断線していて、少々粗い構図だが、「お金が回らない」=「無限大の金利を要求する」ようなイメージだ。金利とは「貸し出しに回ったお金」という偏った限られた母集団に対する「利子率」としてカウントされるが、「貸し出しに回らなかったお金」については事実上金利水準を測る母集団に入らない。それは当然のことなのだが、「貸し出しに回らなかった」ことが「非常に高い金利を要求した」ことをインプライドしているとすると、現実的な金利って高いのではないかと思われる。

貸し渋り」とか「貸し剥し」という現象面でしか把握できない経済行為についても、金利に換算できるような理論式があれば良いのだが、実際にそんなものはないので金利の世界の話には加わってこない。

流動性の罠」の世界では、異常に低いレベルに誘導された金利市場がある一方、異常に高いレベルの「金融スラム」のような場所も同時にあって、その間でのお金の融通が効かないという、一種の金融仲介機能の麻痺状態が成立してしまっているようだ。

無理に「政府保証」などをつけて、「金融スラム」にお金を回そうとすると「ゾンビ企業」の延命といったモラルハザードに繋がるし、放置しても「分断状態」が続くだけだ。マネーサプライは増えるのでインフレ気味になる。すると民間の経済活動は「金融スラム効果」も手伝って低迷気味であり、賃金はせいぜい横ばい。したがって、インフレが進行すると賃金デフレが起きてしまうので、消費は低迷し始める。すると、消費が冷え込んで、さらに実体経済の停滞が長引く、企業はリストラして利益を上げようするが、他方で失業者は増えるので家計は痛む。すると、個人消費も個人投資にも悪影響がでる。

ここで、更に量的緩和を実施しても、結局
「インフレ誘導」→「賃金デフレ」→「消費低迷」→「経済失速」→「リストラ」→「失業者増」
となってなかなかこのループから脱却できない。

ゴールドラッシュはこうしたループの先を見ての動きなのか、どうなんだろう。