日本円とスイスフランの類似性

米ドル、ユーロ、中国元、豪ドル、ブラジル・レアル、メキシコ・ペソなどなど沢山の通貨がありますが、日本では無論「円」が通貨として使用されています。でも、日本円を「数ある通貨の一種」として客観認識できる力って、生まれてからずっと日本で生活している日本人には身につきにくい。なぜなら、日本円とは国内では唯一無二の「お金そのもの」だから。

日本はずっと「単一民族国家」ならぬ「単一通貨国家」です。

昔のロシアとかカリブ・中南米のどこかの国ように自国通貨に信認がなくて「米ドル」といった外貨が重宝されるようなところでは、事実上の二重通貨制度だった「多通貨国家」だったりすれば通貨の相対感というのが身につくかもしれないのですが、日本ではそのような「通貨の輸入措置」がなくてもやっていけている。そのため、日本製である円がゲンナマとして流通しています。

円は「価値の評価」に使われます。例えば、テレビ東京系の番組「なんでも鑑定団」での鑑定結果は「円」表示です。

円ドルレートでも、
1ドル=80円
のように書かれます。

株価でも、例えばソニーの株価は2000円といったように表記されます。

ここで、ソニーの株価も円ドルレート方式、
ソニードル=2000円
のように書いてみます。すると、株価というのは「ソニードルと円との交換レート」であるように見えてきますね。

ここで
ソニードル=2500円
となったら、
ソニーの株価が上昇した」
とみなさんはふつうに思うでしょうが、
「円がソニードルに対して下落した」
とか
「円安・ソニー高が進行した」
とはあまり思わない。

それは株価の場合と為替の場合での思考のフレーミングが異なっているからです。

反対に、このフレーミングを使うと、
ソニードル=1500円
円高ソニー安が進行した」
ということになります。

ソニードルに対して円高・円安になる理由(つまり株価が上下する理由)を挙げてみると、
1.ソニーが好業績・高成長率(円安・ソニー高)
2.ソニーの業績が不振・低迷(円高ソニー安)
3.ソニーが公募増資を実施、希薄化懸念(円高ソニー安)
4.ソニーの資金繰りが苦しい・借り換えが出来なそう(円高ソニー安)
5.ソニー株が割安(低PBRで低PER)っぽそうだ(円安・ソニー高)
などなど。

つまり円が特に何もしていなくても、ソニー側のアクションで円高になったり円安になったります。

ここで、「ソニーを米」に置き換えます。

すると
1.米が好況・高成長(円安・米ドル高)
2.米の不況・低迷(円高・米ドル安)
3.米が借金枠増額を実施、国債増発懸念(円高・米ドル安)
4.米の資金繰りが苦しい・借り換えが出来なそう(円高・米ドル安)
5.米の資産が割安(お買い得)っぽそうだ(円安・米ドル高)
このようになります。つまり円が特に何もしていなくても、米側のアクションで円高になったり円安になったります。日銀の金融政策だけを見ていてもダメなんですね。最近では2,3,4あたりの理由で円高になっています(円ユーロも似たようなものです)。

日本は国債など国の負債が多いのは事実なのですが、4のような「資金繰りが苦しい・借り換えが出来なそう」という台所事情ではないんですね。借り換えとか融通が聞く分だけ欧米よりまだましなのです。

日本円と良く似たポジションに位置する通過にスイスフランがあります。

日本円とスイスフランの最近1年のチャートをみてみると、米ドルと逆になっています。

米ドルは1年前1ドル90円くらいだったのがいまは80円くらい。つまり、米ドルは安くなりました(株価っぽく言えば下落した)。

スイスフランは1年前1ドル80円くらいだったのがいまは95円くらい。つまり、スイスフランは高くなりました(株価っぽく言えば上昇した)。

つまり、ドル・ユーロが弱含んでいる中、円が買われスイスフランはもっと買われたようです。なんとなくですが、円は先進国通過(ドルとユーロ)の中でスイスフランに似た部分があるように思われます。

なぜか?

スイスは日本と同様「貿易黒字国」です。医薬品とか精密・産業機械といった主たる鉱工業があります。そして、加工貿易型国家で「日本をカモ」にしている唯一といっていい国(つまり、対日貿易でスイスは黒字)です。ですから、有事になると貿易収支などファンダメンタルに回帰するので、スイスあたりは黒字国家として脚光を浴びる。日本も黒字なのですがスイスの方が「一枚上」なのでした。