円安になりにくい理由

なかなか円安にならないですね。主に「対ドルでみて」ですが。

中国ではここ何年か「元高」がトレンドです。対米、対EUでみて巨額の貿易黒字を上げており国内経済(GDP)の成長も先進国地域の上をいきますから通貨は強くなるわけです。

ここでふと思ったのが「元高が進む状況下では円安にはなりにくいかも」ということでした。なぜか?日本は中国との2国間貿易で黒字を上げているからです。カジュアルな表現を許してもらえるのであれば、

日本は中国を「上客」にしている
そして中国は米国やEUを「上客」にしている

したがって、貿易での「食物連鎖」のような仕組みを考えると、日本は食物連鎖の上位にいるんですね。だからと言って、別に日本を褒め称える意図はぜんぜんありません。円安になりにくいワケを探しているんです。

■■■

2009年度の世界各国の貿易統計のデータからサッカーで用いるようなリーグ戦勝敗表を作成してみました(ちょっと見にくいかもしれませんが)。


日 韓 中 EU
日本 - ○ ○ ○ ○
韓国 ● - ○ ○ ○
中国 ● ● - ○ ○
EU ● ● ● - ○
米国 ● ● ● ● -

ちなみにデータは
http://www.jetro.go.jp/world/
からダウンロードしました。

これは貿易収支を白星・黒星に変換したもので、輸出超は○(白丸)、輸入超なら●(黒丸)としました。そして、一番左の縦列を基準にして横方向に「星」を見ていく形になります。たとえば、一番上の「日本」の場合、すべて白丸ですから対戦相手全部に対して輸出超(つまり黒字)を達成していることになります。

このリーグには全部で5チームが所属しており、それらは日本、韓国、中国、EUそして米国です。日本は他の全4チームから「勝ち点」を上げており4勝0敗で首位、続いて韓国は3勝1敗の2位、中国は3位(2勝2敗)という結果になりました。

実際、中国や韓国から欧米への完成品の輸出が増えるときには同時に日本から中国や韓国への部品などの輸出も増えたりします。一種の「迂回輸出」になっているんですね。そうした実体経済の拡大を伴って元高が進むと日本円も連れ高し易いという構造になります。

ヘッジファンドの円キャリーといった仮儒による円売りがあれば円安になるのでしょうが、それが収まると「実需の連鎖」の上位に位置する日本はどうしても円高に振れてしまう。

■■■

国内をみればギリシャをはるかに凌ぐ公的負債という問題があるんですが、ギリシャと異なるのは「日本には幸いにも主たる鉱工業があって食物連鎖の上位に(いまのところ)いられてる」ってことですね。

この構造が崩れるとかなりやばそうなんです。なんとなくですが震災をきっかけに数年後には食物連鎖の上位から陥落するのではという危険な気配を感じます。