#希望の党 「排女」小池百合子の落日

【与党圧勝】
第48回衆議院選挙(定数465、2017年10月22日投票)の結果が揃った。自公で312議席の獲得と3分の2(310議席)を上回る圧勝となったわけだが、自民党は単独でも公示前の283議席から1つ伸ばして284議席を獲得。分母である定数が前回比で10減だった分だけ「自民のシェア」が大幅アップとなった。一方、台風の目と称させた小池百合子氏率いる希望の党は公示前57議席から49議席へ現象。また枝野氏率いる立憲民主党は公示前の15議席から50議席へと3倍強の増加となった。このように与野党それぞ明暗は割れたが、概ね下馬評通りの選挙戦結果であり良くも悪くもサプライズはあまりない印象であったにも関わらず、投票日の翌23日の東京株式市場で日経平均が200円以上もアップし、15連騰を記録したことは意外だった。

【野党側のエラー】
この選挙の結果に関して有識者による原因究明によれば、「与党側の作戦勝ち」よりも「野党側のエラー(敵失)」にウエイトがあるように語られているようだ、とりわけ民進党希望の党への合流時に小池希望の党代表が「排除」の発言をしたことが仇となったとの指摘が多い。加えて、小池政党のシンボルでもある都民ファーストの会から音喜多氏ら2名の造反者が出たことも「ノイズ」となった。こうした小池氏サイドでのエラー&ノイズは与党側に有利に働いたようだ。

小池氏による「排除発言後」、カウンターパーティとして枝野氏が立憲民主党を旗揚げしたことも逆風となった。これまでは小池氏が一種の「判官びいきの追い風」にあやかってきたのだが、今回このひいき風は立憲民主党になびいたようだった。すなわち、かつての小池氏の絶妙な「ポジショニング」や「風を味方につけるチカラ」といった"お株"を結果的として枝野氏に全部奪われた格好となってしまったことが、彼女の致命的なミスだったと感じる。排除発言の後、小池氏には「高飛車な印象」が残っただけだった。

民進党希望の党との公武合体運動が取り沙汰された時点で、もし小池氏がその合流に関するインタビューで「排除」誘導尋問に引っかからなかったにとしても、今度は身内の造反というノイズの悪影響で、最後は「目についた しかしやがては 鼻につく」の流れは変わらなかったように思える。一旦「鼻についてしまう」とその"我圧の強さ"の払拭が困難になるのだが、その下地は自らが率いる都民ファースト内で醸成されていたようだった(まだ「小池氏の"高飛車臭"」は都民ファ内にまだ残留しているだろう)。これに対処できなかった小池氏は誠に迂闊であり、「排除」の発言とともに強圧的な印象は内外から周辺に漏洩し、打撃となった。

尤も、この手の粗捜しは後付けでいくらでもできるので結果論的後講釈になりがちなのでこの程度にしておく。

【オーナー政党の宿命】
では、今後どうしたらよいか?仮に小池氏に自分がしくじってしまったという自覚があるならば「しくじり先生劇場」にでも話をもっていってお祓いするしかない(旧民進党には「それ」がなかったので長期間ぐだぐだしたように感じる)。立憲民主党も枝野代表の好感度だけで「保っている」だけであり、党代表である「オーナーの好感度」に依存する体質である点は希望の党とさしたる差はない。

こうしたオーナー政党では党代表の好感度以上に「共感を得られるタレント人材」、自民党で言えば「小泉進次郎氏のような存在」が必要不可欠だろう(若狭氏では迫力に欠けたようだった)。同時に、オーナー以上に周囲からの"共感値"や"好感度"のアップに寄与できるタレントを自由に泳がせられることができる"柔軟な姿勢"もオーナーの力量にひとつだ。都民ファを辞めた音喜多氏には小泉進次郎氏に似たタレント性を少し感じたが、残念ながら造反してしまった、これは大きな小池氏にとって機会損失になるだろうと感じる。"箸の上げ下ろし"や"おかずを食べる順番決め"まで自分がいちいち関わらないと気が済まないという"超潔癖症オーナー"の下では、元気はいいが少々生意気で跳ねっ返り気質の若武者は去ってしまう。オーナーが少々大目に見る柔軟性も組織の飛躍には必須だ。。"しきたり満載"の田舎から若手が去るように硬直的な組織は若者には息苦しく感じる。また若手の不在は組織の停滞を産み、組織の躍動や成長に繋がりにくい。地方でのシャッター通りのようにならないよう、組織のオーナーは「剛柔使い分け」が肝要だ。

【たられば】
ここで反実仮想的な話、いわゆる「たらればの話」を勘案してみたい。個人的に「もしあのとき排除しなかったら、どうなっただろうか?」ということに興味がわく。立憲民主党は誕生しなかった点はプラス寄与だが、マイナス寄与として共産党などとの共闘は望めなかっただろうが、差し引きプラスか?

もし希望の党民進党とが排除なく「公武合体」を果たし、「晴れて小池代表が国政選挙に出る」となった場合でも、今度は「都政はなおざりになるのではないか?」とった批判はいつまでもしつこく付きまとっただろう。小泉進次郎氏曰く「小池氏のジレンマ」(進むも地獄、引くも地獄)の根は深かった。限られた戦力で最初から都政と国政の二面攻撃を強いられた点で、構造的に難しい戦いだった点は否めない。そんなやりにくい環境で小池氏はそれなりに善戦したと思う。

【再チャレンジ】
安倍自民党総裁も第一次政権は不本意に終わり、雌伏の時を時を経た後、満を持して再びチャレンジして現在に至るわけである。小池さんにも再チャレンジの機会があっても不思議ではない。彼女の再チャレンジに期待したい。